【茨城王のいばらき放言】#13 坂東市~地政学的視点からみた坂東市の特殊性 2015.05.26
前回の八千代町に引き続き、今回も同じ県西地区の坂東市です。
県西地区は市町村合併によって名称が変更になったところが多いため、なじみのない方にとってはどの市がどこにあって元々何だったのか全くわからないという(笑)、そういうカオスな状況も珍しくありません。
ちなみに今回紹介する坂東市は岩井市と猿島郡猿島町が合併してできた市です。
「坂東」という名称は利根川の別称「坂東太郎」からきていまして、利根川の流域であることがわかるかと思います。県西でも西寄りの千葉県との県境ですね。
あと、坂東でよく勘違いされるのですが、ファミレスの「坂東太郎」の本社は坂東市ではなく、古河市にあります。また、一号店は境町です。ただし、坂東太郎の社長が修行したのは坂東市に本社がある「すぎのや」ですので、ルーツは坂東市だといえないことはありません。坂東市に行くと「坂東市誕生おめでとう」的な坂東太郎の看板もありますからね。
さて、具体的な坂東市の紹介についてですが、実はネタ的にほぼ完璧な教材が存在していまして、それは笠間編でも登場したイバラッパーの曲……というのは、するどい読者のみなさんならすでにお気づきかと思います(笑)。
その名も「坂東」という曲で、歌詞付きの動画がYouTubeに上がっていますから、坂東市の特徴やおすすめスポット、ご当地ネタはぜひこちらの動画をご参照ください。4分弱で坂東市のことが楽しく学べます。
ではこのコラムでは何を取り上げるかといいますと、今回のタイトル「地政学的視点から見た坂東市の特殊性」になります。
タイトルはあえてアカデミックな感じにしてみましたが、たまにはこういう路線もいかがでしょうか(笑)。
でも「地政学」ってちょっと耳慣れないので難しそうですね。これは地理的な位置関係が政治や軍事、経済などに与える影響を研究する学問のことで、通常は国家単位なんですが、今回はそれの市町村版です。
つまり、地理的な条件が坂東市にどのような影響を与えているかというお話です。
ところでタイトルの「特殊性」というのは、県西地区の中での坂東市の特殊性です。坂東市は県西の中でちょっと変わっていると。それには地理的な要因が深くかかわっているのではないかという私の仮説です。なんだかほんとにアカデミックな感じになってきましたね(笑)。
まず、茨城県西地区といいますのは、茨城の5つのエリアの一つで、県南と同じく「ザ・関東平野」なんですね。「坂東 空ががらんどう」とイバラッパー「坂東」の歌詞にあるように、まっ平らなところで、農業がさかんです(県内農業出荷額の1/4強)。また、工業団地も各地に点在していて、工業もさかんといえます。
ただし、商業はというと、あまりさかんなイメージはありません。他の地域から買い物客が来るような商業地は1つもないといっていいのではないでしょうか。特に「駅前の商店街」的なところで栄えている場所は皆無でしょう。
過去に下館や水海道がそういう一大商業地だったのかもしれませんが、下館は駅前から国道50号沿いに商圏が移っていますし、水海道にいたってはつくばや守谷などの市外へ商圏が移ってしまいました。
他の地域から買い物客がやってくるような場所がないということは、逆に買い物をしに他の大きなまちに出かけるというケースもあるわけで、これが県西地区ではごくごく一般的になっています。
【県西民が買い物に行くまち】
1. 宇都宮・上三川:筑西・結城を中心に宇都宮・上三川方面に出かける人は多いですね。距離的に県庁所在地の水戸へ行くよりも宇都宮のほうが出やすいです。
2. 小山:こちらも筑西・結城、あとは古河からも国道4号で近いので小山という選択肢はあるでしょうね。ちなみに古河と小山の人口はそれほど変わりませんが、商業地としては明らかに小山の方が大きいです。
3. 大宮:宇都宮線で1本なので、主に古河市からですね。大宮は県南常磐線沿線民における柏と同じ立ち位置ですね。
4. つくば:筑西・下妻・常総とは隣町ですから、つくばへの流出は結構大きいと思います。つくばは県南ですが、文化圏でエリア分けしているわけではないので、つくばと県西というのは実際はかなり結びつきが強いです。
5. 守谷:常総や坂東方面から発展中の守谷へというケースもあります。
さて、いよいよ本題の坂東市の特殊性です。行かれたことがある方はわかると思うのですが、坂東市は今でもまちが寂れていないんですよ。これはかなりのレアケースといえます。他は全部商圏がバイパス沿いなどに移ってしまったか、縮小してしまっています。これが起きていないのは県西では坂東市だけじゃないかと思います。
ではなぜ寂れていないのでしょうか? 一つには市や商業者の熱心な取り組みがあるかと思います。歩道をきれいに整備したり、歩行者天国のイベントを開催したり、活性化への取り組みが積極的に行われている印象があります。ただ、それでまちのにぎわいを維持できるのでしたら他にもがんばっているところはたくさんありますから、同じようなケースがあってもおかしくありません。ところが、それが他では見当たらないということは、地理的な要因が実は大きいのではないかと考えました。
まず一番大きい要因と考えられるのが、坂東市が大きな商業地に隣接していないこと。つくばや小山のとなりだったらそちらに買い物客が流れるでしょうが、坂東市はどこに行くにもちょっと遠いので、そういうことになりにくいです。
となりの千葉県野田市は、それほど商業地としては大きくないですし、何より芽吹橋を渡らないと行けないので不便です。また、守谷も少し距離があるのと、守谷のまちが発展してきたのは比較的最近のことなので、まだそこまで影響が出ていないことも考えられます。
他には、電車でのアクセスですが、これが古河~大宮のように一本で結ばれているとより大きいまちに買い物客が吸い寄せられるいわゆるストロー現象が起きますが、そもそも坂東市は鉄道がありません。あったらもちろん便利でしょうが、地元商業者にとってはマイナスの影響も大きいでしょう。
あと、鉄道がないおかげで坂東市には駅前がありません。当たり前ですが(笑)。土浦や下館などは駅前が寂れてしまって、バイパス沿いに商圏が移ってしまいました。それが、坂東市の場合は、駅前をすっ飛ばして最初から国道354号沿いに商店街が存在していたので、ある意味他の一歩先を行っていたのです。
他に商圏が移る大きな要因の一つが大型ショッピング施設ですよね。イ●ンに代表されるアレです。伏せ字バレバレですが(笑)。実は坂東市にもショッピング施設があるんです。ヨークタウンですね。でもそれが郊外のバイパス沿いではなくて、商店街と同じ354号沿いなので、ごっそり商圏が移るという事態にはなりませんでした。これは日本ビクターが撤退した工場跡地にショッピング施設を作ったためです。ビクターは結構大きな工場で、撤退は地元にとって大打撃でしたが、跡地に商業施設ができたことで、まちのにぎわいという意味ではプラスに作用した面も大きいと思います。
というわけで、県西地区の中での坂東市の特殊性と地理的要因が商業にあたえている影響について考察してきましたが、いかがだったでしょうか。なんか当初思っていたよりも真面目な記事になってしまいました(笑)。
現在、坂東市のまちのにぎわいは絶妙なバランスの上に成り立っていると思いますが、どこかで均衡が崩れるとまちのにぎわいにも変化が起こる可能性は大いにあるでしょう。それが、354号岩井バイパスや圏央道の開通なのか、守谷の発展なのか、はたまた念願の鉄道開通によるものなのかはわかりませんが……。
個人的には、商圏が別に移ってしまうことで、茨城に唯一残されているドムドムバーガーが撤退してしまうことを非常に恐れています。ドムドムはマルエツ岩井店の1Fに入っていますので、ドムドムファンの方はぜひ食べに行ってくださいね!「ありふれたフードコート」感が漂い過ぎていてドムドムであることに気づいていない方も多いようです。そこがむしろ「ドムドムらしさ」なのかもしれませんが(笑)。